家庭血圧測定のススメ

わが国の高血圧人口は約4,000万人であり、高齢化社会の進行に伴い今後一層の増加が推測されています。

若年者、高齢者を問わず、血圧値が高いほど脳卒中、心筋梗塞、慢性腎臓病などの罹患率や死亡率が高くなりますが、血圧管理状況は必ずしも十分でなく、若年者では高血圧者の8-9割が未治療であり、全体でも約半数が管理不十分と推定されています。

従来、高血圧の診断や治療効果の評価は、病院や診療所で測定された診察室血圧値に基づいて行われてきましたが、心血管イベント抑制には24時間の厳格な血圧コントロールが重要であり、月1回程度の診察室血圧値ばかりでなく、毎日の家庭血圧値を含めた評価が大切であると明らかになってきました。


家庭血圧値は診察室血圧値よりも一般に低値を示す傾向にあり、家庭血圧値による高血圧の基準は135/85mmHg以上(診察室血圧値140/90mmHg以上)、降圧目標値125/80mmHg未満(130/85mmHg未満),家庭血圧値による高血圧の基準、降圧目標値はいずれも診察室血圧値よりも5mmHg低値になっています。

家庭血圧の測定により白衣高血圧、仮面高血圧の診断が可能になります。白衣高血圧は、家庭で測定する血圧は正常なのに、病院や診療所で測定するといつも高血圧である状態です。医師や看護師の白衣を見ただけで緊張してしまい、それによって血圧が一時的に上昇してしまうのが原因と考えられ、白衣高血圧から真性高血圧へ移行する確率が高いことが知られています。仮面高血圧は白衣高血圧とは反対の現象で、診察室で医師が測定した血圧は正常であるのに、家庭や職場で自分が測定した血圧値が高血圧になる場合で、日内変動や降圧薬の効果持続不十分による朝の血圧上昇が関係しており、コントロール不良な高血圧と考えられます。

 家庭血圧の測定は、上腕用の血圧計を使用して朝と晩の2回行います。指用や手首用の血圧計は不正確になることが多いのでお奨めできません。朝は起床1時間以内、排尿後、座位1-2分後の安静後、降圧薬服用前、朝食前に、また晩は就床前、座位1-2分の安静後に測定することが推奨されています。

 

高血圧基準

 

診察室血圧

家庭血圧

収縮期血圧

140mmHg以上

135mmHg以上

拡張期血圧

90mmHg以上

85mmHg以上

 

降圧目標

 

診察室血圧

家庭血圧

若年・中年者

130/85mmHg未満

125/80mmHg未満

高齢者

140/90mmHg未満

135/85mmHg未満

糖尿病患者

慢性腎臓病患者

心筋梗塞後患者

130/80mmHg未満

125/75mmHg未満

脳血管障害患者

140/90mmHg未満

135/85mmHg未満