2017-05-17
心臓から押し出された血液は動脈を通って体内のすみずみまで張り巡らせた毛細血管に送られて細胞に必要な物質を届けますが、動脈硬化が進むと血管壁の弾力性が失われて硬くなったり、内部にさまざまな物質が沈着して血管の通り道が狭くなったり(狭窄)、詰ったり(閉塞)、あるいは動脈壁が部分的に「こぶ」のように拡張(動脈瘤)したり、動脈全体が拡張したり(拡張症)、内膜に亀裂が入って中膜が裂けたり(解離)、破裂(出血)することにより、組織や臓器全体に血行障害を起こすようになります。
動脈硬化のために臓器や組織に障害が生じる病態を動脈硬化性疾患と呼びますが、代表的なものに虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)や脳血管障害(脳梗塞、脳出血)などがあります。 高血圧症、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は動脈硬化性疾患の危険因子となります。
一人の人がこれらの危険因子を複数同時にもつこともまれではありませんが、危険因子の重複は偶発的なものではなく、基盤に共通の病態をもって動脈硬化の発症に関与すると考えられ、メタボリック症候群と呼ばれています。また、このように生活習慣病が重積する場合、それらが同時に発症することはまれで、その人の一生の中で時系列的に発症することがほとんどです。 つまり、最初に生活習慣のゆらぎ(みだれ)が存在し、そのゆらぎがドミノ倒しの駒を倒す引き金となって肥満やインスリン抵抗性を惹起し、その結果、高血圧症、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が発症すると考えられます。
100年前、米国の著名な医学者であるウィリアム・オスラー博士が「ヒトは血管とともに老いる」と述べたように、動脈硬化は老化の最たる症状です。 血管をいかに若々しく保ち、動脈硬化性疾患の代表である虚血性心疾患や脳血管障害の発病の予防に結びつけることができるかが「健やかに老いる」ための必須条件の1つといえます。
最近、「血管年齢」を測定する機器が開発されて評判を呼んでいます。皆さんも自分の「血管年齢」を知って、あらためて生活習慣のゆらぎ(みだれ)を反省してみてはいかがでしょうか。